〜月の輝く 砂漠の夜 しんしん静かな 砂漠の夜〜
ラクダの キャメルン 産まれたよ
パパの名前は キャメルンバ
ママの名前は キャメルンルン
ふたりの愛をいっぱい受けて キャメルン すくすく 育ったよ
星のまたたく、満月の夜 キャメルンがママに聞きいた。
「お月さまより、きれいなものは、お空にあるの?」
「たしか 砂の山をふたつも、みっつも、こえたところで お空に虹という7色の美しい橋がかかる国があると、聞いたことがあるわ。」
「にじ?その橋は、にじって言うの? 虹の橋がお空にかかるところを、ぼくみてみたい!」
「…そうね もう少し、大きくなったらね」
そして月日は流れ 少し大きくなったキャメルンは、旅にでた。
お月さまよりきれいな、虹をみるために・・・。
旅に出たキャメルンは、一生懸命とことこ歩いた。
山をふたつこえ、みっつこえて ママの言っていた、虹の国へ。
そこで、キャメルンは足を止め 毎日お空をみていたけど、虹の橋は架からない。
・・・どこに橋はあるのかな?・・・
月が満ち、かけていき また満ちて、かけていったけど、虹の橋は見つからない。
そうだ、空を飛ぶ鳥さんなら、知っているかもしれないぞ・・・
「ねえ、鳥さんたち 虹という橋を、みたことありますか? ぼく、虹を探して砂漠からきた、キャメルン。」
「こんにちは、キャメルン。 虹を見たことあるわよ。 雨が降って、お日様が出て、天使のごきげんがとても良いときに 虹は出るのよ。」
「ほんと!早くみてみたいなぁ。」とキャメルンは、ワクワクした。
おひさまは毎日元気に顔をだした。
次の日も、また次の日も…
それでもキャメルンはあきらめずに 雨を待った。
・・・ある日・・・
おひさまが、うっかりねぼうをしてしまい、雨がポツンと キャメルンの鼻の上に落ちてきた。
「これ、雨っていうんだよね? やったぁ!雨だ!」
砂漠でめったに降らない雨をみて キャメルンはおおはしゃぎ。
水たまりで はねたり、寝ころんだり、走ったり・・・。
その様子を、空の上からみていた天使たちは あまりに雨と楽しそうに遊ぶキャメルンをみて とってもHAPPYな気持ちになった。
「あんなにも、雨と楽しそうに遊ぶ子、はじめてみたわ!」
「とってもうれしそうに、笑っているよ!」
「僕たちまで、楽しくなるね♪」
とても気分がよくなった、一人の天使が歌いはじめました♪♪♪
すると、雨がやみ空が静かになると、ほほを赤くしたおひさまが顔を出した。
7人の天使は美しい声で次々と歌い始めた。
天使の歌声は、光のしずくになり 赤や黄色や紫の7色のリボンになって気持ちよさそうに踊りだした。
そして、天使達の歌が終わると 風に舞っていた7本のリボンは一つの太い束になり とてもすてきな橋になった。
そう、それこそが 空にかかった7色の橋 虹だった。
光り輝くその虹は、ママが言っていたように、今まで見たことのない美しさだった。
「わぁ!!ついに虹にあえたよ!わーい☆わーい☆」
キャメルンは嬉しくて うさぎのようにぴょんぴょんと、虹にとどきそうなくらい、高く高く跳ねた。
・・・こんなにきれいな虹をパパとママにも見せてあげたいなぁ。でも、どうすれば砂漠に虹を作ることが出来るのかな?・・・
キャメルンはいっぱい、いっぱい考えた。
そして、いつかパパが言っていたことを思い出した。
「・・キャメルン、海にはねイルカというとても賢い生き物がいるんだよ・・」
「そうだ、イルカさんなら何か知っているかもしれないぞ。」
キャメルンはイルカさんに会うために海へ行くことに決めた。
また歩き始めたキャメルンは、大きな山を、ふたつこえ、みっつこえ 海にでた。
はじめて見る海、大きくて広くて青い海…。
ざぶーん ざぶーんと 白い泡をたてる波を追いかけて遊んだ。
海を見た事がないママに、きれいなピンクの貝殻を見つけて大事にしまった。
それから大きな声で、海に向かって叫んだ。
「おーい イルカさ〜ん!ぼくの声が聞こえてたら返事をしてくださ〜い。ぼく砂漠からきた らくだのキャメルンです。どうかぼくに、虹の作り方を教えてくださ〜い。」
のどが痛くなって声がかすれても、キャメルンは何回も叫び続けた。
パパとママに、どうしてもあの美しい虹を見せたかった。
5日目の朝 キャメルンがあきらめずにさけび続けていると、波をぬうように銀色の背びれが 浜に近づいてきた。
キャメルンは息をのみ、海を見つめていると つるんとした体が波の間から顔を出した。
「遅くなってごめん。私を呼んでいたのは君だね? こんにちはキャメルン。」
「うん。 きてくれてありがとう。」
「僕をさがしていたのは、海の仲間から聞いていたよ。 君の聞きたい事って何かな?」
「砂漠に虹を作ってパパとママに見せてあげたいのです。どうしたらいいのか教えてください。」
「それはとても大変なことだけど、がんばりやの君ならできるかもしれないね。」
「まず始めに翼をつけるんだ。そして空を飛び、虹のリボンを1本ずつ食べるのさ。あとは砂漠に帰って、君の心だけが知っている本当の言葉をとなえるんだ。その言葉が魔法の言葉になるんだよ。」
「ほんとうのことば?まほうのことば?わからないよぼく…。」
「その言葉は君の心しか知らないのさ。他の誰にも答えることができないんだよ。私も知らないし、たとえ神様でも知らないのさ。」
「それに ぼく羽なんて 持ってないよ。」
「なければつけるのさ。君が心の底から望めば 奇跡の扉が開いて 夢の世界から現実の世界へやってくるのさ。頭で考えず、心から YES と思うんだ。信じることさえとおりこし ただ YES と思ってごらん。」
そしてイルカは「砂漠の魔法さ」とウィンクをして広い海へ戻っていった。
・・キャメルンは 自分はラクダでこれからもラクダで 空を飛ぶなんて無理だと思っていた。 でも、空を飛ぶことを、心から望み YES と思えば願いは叶うとイルカさんは言っていた。
たしかにそう言ってた…。
キャメルンはその場に座りこみ 胸の辺りに手を当てた。ここは、うれしいとワクワクしたり、悲しいとキューンと痛くなる場所。
ゆっくり目を閉じて心を感じてみると、ジワ〜と豊かさが広がっていくのを感じた。
キャメルンが眠りにつくときに、パパやママがいつも「大好きだよキャメルン。産まれてきてくれてありがとう。」と言って、抱きしめてくれた時、湧いてきたあの感じ。
甘い香りに包まれたような、あの感じ…。
「それはね、愛というものだよ。」とパパが言ってたな。
「愛」ってあったかくって、あまくていい香り・・・。
遠く離れている砂漠で、パパやママの想いと繋がっていることが、はっきりわかった。
キャメルンはその想いに抱かれ、波の音を聞きながら・・・「パパ、愛っていいね。」とつぶやき、深い眠りについた。
キャメルンは、久しぶりにパパとママに包まれながら安心して眠ったような気がした。
その夜 キャメルンがみた夢は、まっ白い大きな翼をつけて、とっても気持ちよさそうに大空を飛んでいる夢だった。
何もこわがらず大空を自由に飛んでいた。その時もハートにはあったかな、あの想い「愛」があった・・・。
朝 足元まで押し寄せる波で目が覚めたキャメルンは、もう一度静かに目を閉じ、イルカさんの言っていたように、心から翼を望み、とても静かな気持ちで、心から YES と思った。
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しーんと辺りが静まりかえり、心がきれいに洗われたような感覚がした。
そして、ゆっくり目を開けてみると、いつもある足が4本あって、いつもある長いしっぽが揺れているのが見えた。それから空の方に目を向けてみると、なんとそこには、お日様に照らされてピカピカ光る純白の美しい翼がキャメルンの背中についていた。
「やったよ!やった!ぼく翼がある!! すごいよ!すごい!ぼく空を飛べるんだね!!」
キャメルンは大喜びで、ぴょんぴょんはねました。そう、うさぎみたいにね。
それからキャメルンは、ドキドキしながら、そーっと翼を羽ばたかせてみた。すると、ふわっと宙に浮き地面から足が離れた。勢い良く翼を動かしてみると、鳥のようにキャメルンは空を飛んでいた。空からみる素晴らしい眺めに感動して胸が震えた。
奇跡はこんなにも身近にあるんだ、心から願えばこんなにも凄いことが起こるんだ、疑わず自分の力を信じればきっと何でもできるんだろうなと思えてきた。
今まで無理だと思い込んできた事は、自分が決めていただけなんだね。
「ココロのチカラ バンザ〜イ!」
なんだかとても自由な気分になり、世界が広くなった気がした。
こうして 白い大きな翼をもらったキャメルンは、毎日高く飛ぶ練習をした。
そう、虹の所まで行くために…。
キャメルンの頑張っている姿を見ていた天使達が、飛び方を教えてくれた。
とても親切に教えてくれる天使達の翼を見ていると、神様のお手伝いで、遠くの子供達の願いを聞きに、方々飛び回る天使の羽が、痛んだり汚れたりしていることに気がついた。
こんなにも良くしてくれるお礼に、新しい翼をプレゼントしようとキャメルンは思った。
ぼくの翼はこんなに大きくて、たくさん羽がついている。これで新しい天使達の翼を作ることにしよう。
キャメルンはその夜、自分の翼から1本1本羽を抜き、7人の優しい天使に翼を作った。
・・・小さな、まっ白な翼ができあがった時には、辺りは明るくなり始めていた。
けれど 太陽は顔を出すことはなく、しばらくすると大粒の雨が降り出した。
これは神様からのプレゼントだった。
自分の羽を抜き、天使の為に翼を作っているキャメルンの優しさを見て、虹を作るのに必要な雨を降らせてくれたのだ。
そして じきに雨はやみ太陽が山の間から出てきたとき、虹のことを教えてくれた鳥さんが、やって来て言った。
「天使の翼は、ぼくが届けるよ。キャメルンは虹が出るのをここで待ってるんだ。」
そう言って鳥さんは7人ぶんのプレゼントを大切に背中に乗せ、空高く飛んでった。
いろんな事が、まるで計画でもしていたかのように進んでいることにキャメルンは驚いた。
すると、足の方から小さな声が聞こえた。耳を澄ませて聞いてみると「世の中に起こる全てのことは偶然ではなく、心の声に従って、自分に正直に生きていれば、全ては流れにのり、良い方へ流れていくものさ。」と聞こえた。
「え?君は誰?」キャメルンは目をこらし地面を見た。
・・・それは、お花だった。うすいピンク色の美しい小さな花だった。
「お花さんだったんだね。君のようにきれいな花、ぼくはじめて見たよ。」とキャメルンがそう言うと、お花はピンクの花びらを横に振り答えた。
「私達はいつも君の歩く道で唄を歌っていたよ。でも君は、虹のことばかり夢中になって、空しか見てなかったからね。」
それを聞いて、キャメルンはいつかママが話してくれた「青い鳥」のお話を思い出した。幸せや大切なことはすぐ近くにあるのに、遠くばかり探しているとわからなくなる、気づくことで近くにある幸せを見つけられる。というお話だった。
「ごめんよ。 ぼく、ちっとも気づかなくって。こんなにきれいな君たちを、ふんでしまっていたかもしれないね。」
小さな花に、大きな大切なことを教わった気がした。
心の引き出しにしっかりしまっておこうと、キャメルンは思った。
・・・その頃、空の上では・・・
天使達は鳥さんが運んでくれた、新しい翼をつけておお喜び。
「なんて綺麗な翼なんでしょう。ピカピカに光っているわ。とても早く飛べそうだね。これで神様のお手伝いがもっとできそうね。」
「ありがとう!キャメルン!!」
7人の天使はうれしくて、いつもより大きな声で唄を歌った。その美しい声につられておひさまも歌いだした。
その声は再び光のしずくとなり、やがて7色のリボンとなって、踊りだした。
風にのり気持ちよさそうに空に舞い、それから1つの大きな帯になり、ついに待ちにまった虹が空に架かった。
それは今までにない大きさの、虹だった。天使達の LOVE がいっぱい詰まった虹だった。
虹の架かるようすを、胸を躍らせながら地上で見ていたキャメルンは、白い翼を勢いよくはばたかせ、空に舞い上がろうとした。天使に教えてもらい、たくさん練習をして、いつ虹が出ても飛べるようになっていた。
・・・パタ パタ パタ・・・いつものように羽ばたかせた。
けれども体は地面についたまま・・・
・・・パタ パタ パタ・・・どうしたのだろう?
何度も、何度もやってみたけれど、体は宙に浮かばない。
不安になったキャメルンは、翼をじっと見た。羽の間からおひさまの光がたくさん入って見えた…。
キャメルンの羽は、天使達7人分の翼をプレゼントするために、羽をいっぱい抜いてしまって、とても少なくなっていた。
何度、羽ばたいてもすき間から風がぬけてしまい、キャメルンの大きな体は飛ぶことができなくなってしまった。
・・・早くしないと・・・
早く虹の所まで飛び、虹をたべなくちゃ・・・虹が消えてしまうよ・・・
キャメルンは今にも泣きそうになった。
「せっかく頑張ったのに…。もう少しでパパとママに虹を見せられるのに。このままじゃ虹のところに飛んで行けないよ…。」
ついにキャメルンの長いまつげの間から大粒の涙がポトポト落ちた。
そこには、あの小さな花たちが咲いていた。
「さあ、キャメルン。僕たちの花びらを使いなよ。翼のすき間に花びらをぎっしりうめるのさ。そうすれば飛ぶことができるさ。」
「そんなことしたら、君たちが枯れてしまうよ!」
「大丈夫。命はけして終わらない。魂の光は時を超えて、ずっと生き続けていくものなんだよ。」
「花びらはなくても種はできる、その種はやがて土に落ち、また必ず小さな命が生まれてくるだろう。僕たちの新たな命の始まりさ。」
ゆっくりと静かな声で、花たちはキャメルンに言った。
「ありがとう…ありがとう…」
胸いっぱいになり、涙があふれだした。
あたたかな涙で、最後の雨を愛しそうに花はあび、自らその花びらをキャメルンに差し出した。
「さあ、受け取って。君だって、その羽を惜しげもなく、天使達に差し出したじゃないか。おあいこだよ。」
「宇宙はね、みんなひとつなんだ。いろんな事がばらばらに見えるけど、本当はみんな繋がっていて、ひとつの大きな輪っかなのさ。
「君と僕もひとつだよ。ひとつの大きな愛という名の命なんだ。だから君がうれしいと僕もうれしい。ね、わかるだろ?」
・・・「うん…。うん…。」とキャメルンは、ただ、だまってうなずいた。
「約束するよ。お花さん達。ぼくはこれから足元もちゃんと見て歩くよ。君たちのような小さな、そして大きな愛にあふれた心をもつ花を、けしてけして傷つけたりしないように。そして花を見るたびに君たちのことを思い出すよ。」
「ありがとう。キャメルン。」花の声がだんだん小さく弱くなっていき、やがて辺りは静かになった。
キャメルンは涙をふき、ゆっくりと立ち上がり、花がくれたピンク色の花びらを、翼のすき間に、丁寧に埋め込んだ。
真っ白だった翼は、お花畑のように甘い香りのする、白とピンク色のきれいな翼に生まれ変わった。
そして翼をはばたかせると、甘いにおいが、キャメルンを包み込み、そのかぐわしい香りとともに、キャメルンの体は宙に舞い上がった。
・・・今までより、ずっとかろやかに・・・
空高く、虹をめざして 上へ上へ、あの虹の元へ・・・
みんなの想いをのせて、みんなの愛をのせて、キャメルンは翼をはばたかせる。
輝く大きな翼にたくさんの祈りをのせて・・・
そして ついに虹の元へたどりついたキャメルンは、ゆっくりと1本づつ虹のリボンを食べ始めた。
始めはむらさき色。美味しいブドウの味が口いっぱいに広がった。すると、キャメルンの体もむらさき色に染まった。わぁ!びっくり!
次は黄色。甘いホットケーキの味。今度は体が黄色に変わった。またまたびっくり!
次に食べたのは緑色、それはオリーブの味。
青のリボンはオアシスの澄んだ水の味。体は空のように真っ青になった。
オレンジのリボンはみかんの味。ピンクのリボンはわたあめの味。赤のリボンは大好きないちごの味。食べるたびにキャメルンの体はリボンの色に染まった。
そして、全てのリボンを食べ終わった時、キャメルンの体は7色の水玉もようになった。
「こんなにすてきな7色のラクダは、世界中探してもぼくだけだ!やったー!!」キュートな体にキャメルンは大喜び!
虹のなくなったお空で、くるくる飛び回りダンスを楽しんだ。おひさまが沈み、月がでて星がまたたく夜になっても、キャメルンは踊り続けた。
だって すごく嬉しかった・・・
こんなにすてきな体も、お花がくれたありったけの LOVE も、鳥さんの親切も、イルカさんの言葉も・・・。 それに、虹を砂漠にもって帰れるんだ。
みんなの愛がつまったこの時間をいつまでもあじわっていたかった。
「みんな、みんな、ありがとう。ぼくはすごく幸せ者です。たくさんの愛と優しさを本当にありがとう!!世界一幸せなラクダです。」
月の光に照らされて、7色の水玉もようが星のようにピカピカと夜空に光っていた。
空はひとつに繋がっている。もちろん砂漠にも・・・。
ピカピカ光る7色の星をみて、パパとママは囁いた。
「今夜はなんてすてきなお星さま。」
「キャメルンにもみせてあげたかったね。早く会いたいな。」
「何よりも大切なキラキラ光る宝物。」
「私たちの可愛いぼうや・・・」
次の日・・・
おひさまより早く目を覚まし、キャメルンは砂漠に向かった。
「早くおうちに帰ろう。パパとママの居るあのおうちに早く帰ろう。 すてきなプレゼントまっててね。」
翼をはばたかせ、山をこえ海を渡り、また山をこえてキャメルンは、ついに砂漠に帰ってきた。懐かしい熱い金色の砂。そうだこの感触!ここが僕の住むところ・・・
「ただいま砂漠!」
キャメルンは、急いでかけ出した。見慣れた懐かしい景色が近づいてきた。
・・・・「ただいまーーー!!」
大きな声でお家の扉を開けると、びっくりした顔のパパとママがいた。
「やっと帰ってきたのね。」
「なんてすてきな体になったんだろう。あの夜のお星さまと同じじゃないか!」
二人に抱きしめられ、キャメルンは二人のあたたかな胸に鼻をすりすりした。パパとママの匂いがした。
「よく無事で帰ってきたな、キャメルン。がんばったな。」目をうるうるさせながらパパが言った。
「うん。ぼく、いろんなことを、たくさんの友達に教わったんだ。パパが言ってた愛の意味もわかったんだよ。」
「それはよかったね!パパはとっても嬉しいよ。何よりのプレゼントだよ!」
「うん。でももっと見せたいものがあるんだ。 それは、友達の愛がいっぱいいっぱい詰まった美しい虹を、パパとママに見せたいんだ!」
そう言って キャメルンは空へ舞い上がった。
我が子が空を鳥のように飛ぶ姿に二人は目をぱちくり。
「ママ、受け取って。空からすてきな流れ星だよ。」
キャメルンは大事にしまっておいたピンクの貝殻を空からママに投げた。
流れ星を見るのが大好きなママが「あの星をペンダントにできたら素敵でしょうね。」といつも言っていた事をキャメルンは覚えていた。
ピンクの流れ星には、ひもが付いていて、ママは嬉しそうに首にかけた。その日はママの誕生日だった。ふふっ♪。
ママの嬉しそうな笑顔を見てから、キャメルンはもっと空高く飛んだ。
そして、イルカから教わった「心からの言葉」を聞くために、ハートに手を当てて目を瞑った。
・・・砂漠の魔法の言葉・・・
静まりかえった夜の砂漠で、空には星がまたたき、月はキャメルンを照らし続けた。
・・・心の言葉が静かに口を開いた・・・・
「あ・り・が・と・う」
すると・・・
キャメルンの口から虹のリボンが1本づつ飛び出し宙を舞い、パパとママの上を美しい曲線を描きながら流れた。
そして、1本の大きな帯になり・・・
・・・虹になった・・・
はじめてみる砂漠の虹・・・・
美しく、神々しい。なんて暖かく、なんて愛らしい・・・
凛として清らかな光を放つ虹。
キャメルンの愛が、みんなの愛がたくさん詰まった虹。
パパの想いと、ママの優しさがいっぱい詰まった虹だった。
その虹は、消えることなく3日3晩、金色の砂を照らし続け、役目が終わったことを確かめるように1本づつ、ゆっくりと空の彼方へ姿を消した。・・・・・
最後の1本をキャメルンは見送った。けれど寂しくなかった。
望めばいつでも心の中に虹は架けられることを知ったから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そう、誰の心の中にも虹はある。
あなたが心の声を聞き、その言葉に耳を傾けた時
あなたの心にも、大きく美しい虹が架かる。
あなたが望めばいつまでも
けして消えることのない、大きな虹が
あなたの心の中に輝き続ける。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・あなたにとって
まほうのことば は なんですか・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・